第11章 システム運用の要点
ITIL、DevOps、構成管理、サービスレベル、障害と回復を整理
- 第11章は、システムを本番に移してから、安定して動かし続けるための章です。運用移行、管理と運用、問題の対応と回復まで出ます。
- ITIL 4 のサービスバリューチェーン、変更コントロール・リリース管理・展開管理の順、SLA と SLM、ホット・ウォームスタンバイのように、似た言葉と手順の違いが問われます。
- 用語は「運用のどの場面の話か」で6つに分けると、覚えやすくなります。
この章で問われること
第11章「システム運用」は、作ったシステムを本番に移して、安定して動かし続けるための考え方と道具を扱います。運用の枠組み(ITIL 4)、開発と運用を近づける DevOps、構成と資産の管理、サービスレベル、可用性と保全、障害が起きたときの対応です。
もちこ道場の模擬試験(全章から60問・60分)では、第11章から5問を出しています。もちこ道場ではモバイルシステム科目を第9〜12章としていて、この4章は同じ5問ずつです。そこで、本番の1科目43問のうち、第11章からは11問前後と予想しています(予想です)。
出てくる用語は、運用のどの場面の話かで、次の6つのまとまりに分けると整理しやすくなります。
6つのまとまりと押さえる用語
1. 運用の枠組み
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| ITIL 4 とサービスバリューシステム | サービスで価値を生むための運用の考え方。中核がサービスバリューチェーン |
| サービスバリューチェーン | 顧客の機会や需要を起点に、運用の活動を通して価値を生み出す付加価値のモデル |
| 変更コントロール | リリースに伴うリスクを評価し、承認する |
| リリース管理 | 開発の完了を判定し、リリースの計画を立てる |
| 展開管理 | 成果物を本番の環境へ移す |
| SIAM | 複数のサプライヤのサービスを統合し、1つの組織のように運用する |
2. DevOps と自動化
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| DevOps | 開発と運用が連携して、速く安全にリリースする |
| SRE | DevOps の考え方を、ソフトウェアの方法で運用に実装する方法論 |
| CI と CD | コミットのたびにビルドと自動テストを行うのが CI(継続的インテグレーション)。それをリリースの準備まで広げるのが CD(継続的デリバリ) |
| IaC | サーバやネットワークの構成をコードで書き、構築を自動化する |
| イミュータブルインフラストラクチャ | 稼働中の環境は直さず、変更した新しい環境を作って入れ替える |
| FaaS とマイクロサービス | FaaS は、呼び出されたときだけプログラムを動かす。マイクロサービスは、サービスを小さく独立させて、外部の API と組み合わせやすくする |
| エラーを前提とする文化 | 障害を絶対に出さないのではなく、起きる前提で素早く直して学ぶ |
3. 構成と資産の管理
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| CI(構成アイテム)と CMDB | 管理の対象(サーバ・ネットワーク機器・文書など)を CI と呼び、その情報を CMDB に集める。継続的インテグレーションの CI とは別の言葉 |
| データディクショナリ | データベースの項目の名称・意味・データ型などを明文化して管理する |
| 現況管理とインベントリの自動収集 | CI の最新の状況や所在を持ち続ける。ネットワーク越しの自動収集で棚卸しの手間を減らす |
| ファシリティマネジメントと ISO 41001 | 施設とその環境を、組織の活動のために総合的に管理する経営活動と、その規格 |
| DaaS | 端末の調達から更新までを、月額などのサービスとして使う |
| SECI モデル | 経験などの暗黙知を、言葉や図にして形式知にする段階が表出化 |
4. サービスレベルの管理
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| SLA | サービスの水準(提供時間・レスポンス・稼働率など)の合意 |
| SLM | SLA の評価を続け、状況の変化に合わせて見直していく管理 |
| SLAM チャート | SLA の達成度を色分けなどで見やすくして、経営層に示す図 |
| サービスデスクとセルフサービスポータル | 問い合わせを一元的に受ける窓口。定型の依頼は、利用者が Web 画面で自分で行えるようにする |
| 待ち行列(M/M/1) | 窓口の混み具合や応答時間を、窓口利用率などで評価する |
5. 可用性・保全・予兆
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| ホットスタンバイとウォームスタンバイ | 待機系が常に動いている(ホット)か、制限された待機状態で、引き継ぎに少し時間がかかる(ウォーム)か |
| 保守性 | 障害が起きたときに、早く直せる性質。駆け付けの体制や、部品のモジュール化で高める |
| ベースライン | 平常時の資源の使い方や性能の標準の状態。ここからのずれで予兆を見つける |
| ローリングメンテナンス | サービスに影響しないよう、1台ずつ順に切り離して保守する |
| トレーサビリティ | 遡って原因の工程や部品を追える。出荷物から原因へ遡ることがトレースバック |
6. 問題と回復
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| ワークアラウンド | 原因の特定や本格的な対策を待たず、サービスを続けるための暫定の回避策 |
| AI のバージョン管理 | 訓練データとモデルのバージョンを管理し、精度が落ちたときに戻せるようにする |
| データポイズニング | 訓練データに細工をして、AI モデルを狂わせる攻撃 |
| フォールバック計画 | 閾値を超えた異常のとき、人の管理の下の運用へ切り替える計画 |
取り違えやすい組み合わせ
選択肢には、同じまとまりの用語が並びます。次の組み合わせは、「何が違うか」を一言で言えるようにしておきます。
| 組み合わせ | 見分け方 |
|---|---|
| 変更コントロール・リリース管理・展開管理 | 承認(変更コントロール)→ 完了の判定と計画(リリース管理)→ 本番へ移す(展開管理)の順 |
| CI と CD | ビルドとテストの自動化(CI)か、リリースの準備まで広げた自動化(CD)か |
| DevOps と SRE | 考え方(DevOps)か、それを実装する方法論(SRE)か |
| IaC とイミュータブルインフラストラクチャ | 構成をコードで書く(IaC)か、直さずに新しい環境へ入れ替える(イミュータブル)か |
| SLA と SLM | 水準の合意(SLA)か、その評価と見直しの管理(SLM)か |
| ホットスタンバイとウォームスタンバイ | すぐ引き継ぐ(ホット)か、少し時間がかかる(ウォーム)か |
| ワークアラウンドと恒久対策 | 暫定の回避策か、原因を取り除く対策か |
| 暗黙知と形式知(SECI の表出化) | 経験や勘(暗黙知)を、言葉や図にする(表出化)か |
この章の勉強の進め方
- 6つのまとまりの名前を覚え、用語を見たら「どのまとまりの話か」を言えるようにします。
- ITIL の変更・リリース・展開の順序と、CI と CD の違いを、何も見ずに説明できるか確かめます。
- 問題を解いて、迷った用語をその日のうちに見直します。
勉強の全体の計画は「勉強時間の目安と1か月の計画」にまとめています。
第11章の問題を2問、解いてみる
もちこ道場の第11章の問題です。演習画面と同じ解説(図解・選択肢ごとの解説)を付けています。
問1
システム運用の全体的な枠組みであるITIL 4において、顧客の「機会や需要」を起点としてサービスによる最終的な「価値」を創出するための一連の運用活動を体系化した付加価値モデルは1と呼ばれる。
答えと解説を見る
正解は 4(サービスバリューチェーン(SVC))です。
【概要】
ITILのサービスバリューシステムの中核にあるサービスバリューチェーンは、顧客の機会や需要が運用活動を通じてサービスの価値になるまでを表す付加価値モデルである。
【図解】実験的機能
図解は実験的機能です。内容を簡略化しているため、公式テキストの記載と異なることがあります。
【各選択肢の解説】
- 1. サービスデリバリシステム(SDS)あなたの解答 サービスデリバリシステムはITILのサービスバリューシステムを構成する名称ではなく、本問の付加価値モデルではない。
- 2. インシデントライフサイクル(ILC)あなたの解答 インシデントライフサイクルは障害対応の流れを指す語であり、機会や需要から価値に至る付加価値モデルではない。
- 3. キャパシティバリューモデル(CVM)あなたの解答 キャパシティバリューモデルはITILの用語ではなく、需要から価値への運用活動をつなぐ本問のモデルではない。
- 4. サービスバリューチェーン(SVC)正解あなたの解答 サービスバリューチェーン(SVC)はSVSの中核とされ、機会や需要を運用活動で価値に変える価値連鎖のモデルである。
問2
開発されたシステムを本番環境へ安全にリリースするため、ITILにおけるプラクティスを順次適用する。リリースに伴う潜在的リスクの評価と承認を行うプロセスから始まり、開発完了の判定やリリース計画の策定を経て、最終的に開発成果物を本番環境へ移動させるという正しい手続きの組み合わせは1である。
答えと解説を見る
正解は 4(変更コントロール → リリース管理 → 展開管理)です。
【概要】
開発したシステムをリリースする際、ITILでは変更コントロールでリスク評価と承認を行い、リリース管理で完了判定と計画を立て、展開管理で成果物を移す順に進める。
【図解】実験的機能
図解は実験的機能です。内容を簡略化しているため、公式テキストの記載と異なることがあります。
【各選択肢の解説】
- 1. リリース管理 → 変更コントロール → 展開管理あなたの解答 リリース管理から始める順序は、リスク評価と承認を担う変更コントロールが先頭にないため本問の手続きに合わない。
- 2. 展開管理 → リリース管理 → 変更コントロールあなたの解答 展開管理から始める順序は、成果物の移動を最初に置いており、承認や計画より前に本番へ移す点で逆である。
- 3. 変更コントロール → 展開管理 → リリース管理あなたの解答 変更コントロールの次に展開管理を置く順序は、リリース計画を立てる前に成果物を移す点で誤りである。
- 4. 変更コントロール → リリース管理 → 展開管理正解あなたの解答 変更コントロール → リリース管理 → 展開管理は、承認、判定と計画、成果物の移動の順に並ぶ正しい手続きである。
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よくある質問
第11章は、どの章とつながっていますか?
第10章で作って納めたシステムを、第11章で運用します。第9章で合意した SLA(サービスの水準)が、運用の評価の基準になります。第12章は、運用や提供のときに守る法律の章です。
ワークアラウンドと恒久対策は何が違いますか?
ワークアラウンドは、根本の原因の特定や本格的な対策を待たずに、サービスを続けたり早く戻したりするための暫定の回避策です。原因を取り除く恒久対策とは別です。
AI システムの運用では、何に気を付けますか?
本番で精度が落ちたときのために、訓練データとモデルのバージョンを管理します。訓練データに細工をされる攻撃(データポイズニング)への備えや、異常のときに人の管理へ切り替えるフォールバック計画も問われます。
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