第9章 システム要件定義の要点
要求の3階層、分析の手法、調達、提案書と見積りを整理
- 第9章は、システムを作り始める前の、顧客ニーズの引き出し、要求の分析、要件の定義、実現方法の検討、提案までの章です。
- ビジネス要求・ステークホルダ要求・ソリューション要求の3階層、MoSCoW・親和図・バリューグラフなど分析の手法、RFI・SLAのような調達と契約の言葉の違いが問われます。
- 用語は「流れのどこで使う道具か」で6つに分けると、覚えやすくなります。
この章で問われること
第9章「システム要件定義」は、企業にシステムを提案する立場の人が、作り始める前にやることを扱います。顧客の話を聞き、要求を整理して、必要な条件に落とし込み、実現の方法を決めて、提案書と見積りにまとめるところまでです。
もちこ道場の模擬試験(全章から60問・60分)では、第9章から5問を出しています。もちこ道場ではモバイルシステム科目を第9〜12章としていて、この4章は同じ5問ずつです。そこで、本番の1科目43問のうち、第9章からは11問前後と予想しています(予想です)。
出てくる用語は、流れのどこで使う道具かで、次の6つのまとまりに分けると整理しやすくなります。
6つのまとまりと押さえる用語
1. 要求の引き出し
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| ビジネス要求 | 企業全体の戦略的な目標。いちばん上の階層 |
| ステークホルダ要求 | 社内外の関係者が、ビジネス要求の達成のために求めること |
| ソリューション要求 | 関係者の要求を満たすための手段(ソフトウェア・業務設備・組織)への要求。機能要求と非機能要求に分ける |
| 効果と実現性のマトリクス | アイデアを効果と実現しやすさで並べ、効果が高く実現しやすいものから具体化する |
| MoSCoW 分析 | 要求を Must・Should・Could・Won't の4段階に分けて優先順位を付ける |
| エフェクチュエーション | 先に目標を決めず、いま手元にある手段から始めて機会を探る考え方 |
2. 要求の分析と構造化
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| 親和図 | たくさんの意見をグループにまとめて、全体を見渡す |
| バリューグラフ | 親和図をさらに、なぜなぜ分析で目的と手段の関係に整理する |
| 因果ループ図とレバレッジ・ポイント | 現象のつながりを矢印の輪で表し、小さな力で大きく変えられる点を探す |
| CVCA | 金銭・製品・サービスなどの価値が、関係者の間でどうやり取りされるか(How)を図にする |
| WCA(欲求連鎖分析) | そのやり取りの裏にある、関係者の欲求(Why)を分析する |
3. 事業とプロジェクトの計画
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| BMC(ビジネスモデルキャンバス) | 9つの構成要素でビジネスの全体像を1枚に描く |
| リーンキャンバス | 課題から先に書き始め、素早く仮説を検証する |
| リーン・スタートアップ | 構築・計測・学習を繰り返し、市場が求める価値を確かめる |
| プロジェクト要件(憲章) | 最初に目的を決める。目的と手段を取り違えない |
| SMART ゴール | 目標を測定できる形で決めるための評価軸 |
| EVM | 出来高(EV)と計画値(PV)を比べて進み具合を数字で管理する。EV が PV を下回れば、計画より遅れている |
4. 要件の実現方法
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| コアコンピタンス | 競合を大きく上回る自社の強み。外に出さず、自社で持ち続ける |
| RFI | ベンダに技術動向や製品・事例などの情報の提供を求める依頼書 |
| 準委任契約 | 仕事を行うことを約束する契約。成果物の完成の責任は負わない |
| シャドーIT とサンクション IT | 許可なく使われているものがシャドーIT。管理の下で認めて使うものがサンクション IT |
| SoR と SoE | 記録を確実に保管する基幹系が SoR。顧客との接点を作る側が SoE |
5. 提案と見積り
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| 提案書の流れ | 現状 → 課題 → 解決策 → 効果、のように、相手が自然に理解できる順に並べる |
| 見積りの根拠 | 工程ごとに、作業量を何で見積もったか(例: 設計ならデータベース設計の量)を示す |
| SLA | サービスの提供時間やレスポンス時間などの水準を、導入部門と利用部門で合意しておく |
6. モバイルと AI の要件
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| ネットワークスライシング | 5G の回線を用途ごとに仮想的に分ける。極小の遅延が要る用途は URLLC のスライス |
| ADE | Apple 製品の端末を MDM に自動で登録し、導入の作業を減らす |
| キッティング | 多数の端末に初期設定やアプリを入れて、使える状態にする |
| 学習データのバイアス | AI の精度(非機能要件)を保つために、訓練データの偏りに注意する |
取り違えやすい組み合わせ
選択肢には、同じまとまりの用語が並びます。次の組み合わせは、「何が違うか」を一言で言えるようにしておきます。
| 組み合わせ | 見分け方 |
|---|---|
| ビジネス要求・ステークホルダ要求・ソリューション要求 | 企業の目標(ビジネス)→ 関係者の要求 → 手段への要求(ソリューション) |
| 機能要求と非機能要求 | 何をするか(機能)か、どの程度の品質で動くか(非機能)か |
| 親和図とバリューグラフ | 意見をグループにまとめる(親和図)か、目的と手段の関係まで構造にする(バリューグラフ)か |
| BMC とリーンキャンバス | 9要素で全体像を描く(BMC)か、課題から書いて素早く検証する(リーン)か |
| CVCA と WCA | 価値がどうやり取りされるか(CVCA)か、その裏の欲求(WCA)か |
| RFI と提案依頼(RFP) | 情報の提供を求める(RFI)か、具体的な提案を求める(RFP)か |
| 準委任契約と請負契約 | 仕事をすること自体が約束(準委任)か、完成が約束(請負)か |
| シャドーIT とサンクション IT | 許可なく使う(シャドー)か、管理の下で認めて使う(サンクション)か |
| SoR と SoE | 記録を確実に残す(SoR)か、顧客との接点をよくする(SoE)か |
この章の勉強の進め方
- 要求の3階層と、流れの5段階(引き出し・分析・要件定義・実現方法・提案)を、何も見ずに言えるようにします。
- 分析の手法は、名前から「何をする図か」を一言で説明できるか確かめます。
- 問題を解いて、迷った用語をその日のうちに見直します。
勉強の全体の計画は「勉強時間の目安と1か月の計画」にまとめています。
第9章の問題を2問、解いてみる
もちこ道場の第9章の問題です。演習画面と同じ解説(図解・選択肢ごとの解説)を付けています。
問1
顧客からシステムに対する要求を引き出す際、要求を3つの階層に分類して整理する。このうち、ビジネス全体の戦略的目標を実現するために、ソフトウェアや業務設備、組織構造などに対して具体的に求められる手段や条件の記述は1と呼ばれる。
答えと解説を見る
正解は 4(ソリューション要求)です。
【概要】
要求はビジネス要求、ステークホルダ要求、ソリューション要求の3つに分けて段階的に分解する。ステークホルダ要求を実現する手段となるソフトウェアや業務設備、組織への要求がソリューション要求である。
【図解】実験的機能
図解は実験的機能です。内容を簡略化しているため、公式テキストの記載と異なることがあります。
【各選択肢の解説】
- 1. ビジネス要求あなたの解答 ビジネス要求は企業全体から見た戦略的な要求や最終目標であり、具体的な手段への要求ではない。
- 2. ステークホルダ要求あなたの解答 ステークホルダ要求はビジネス要求の実現に必要な社内外の関係者からの要求であり、手段そのものへの要求ではない。
- 3. 移行要求あなたの解答 移行要求は現在から将来の状態へ円滑に移るための能力や条件であり、3階層の分類には含まれない。
- 4. ソリューション要求正解あなたの解答 ソリューション要求はステークホルダ要求を実現する手段として、ソフトウェアや業務設備、組織に求める事項である。
問2
顧客の漠然としたアイデアを具体化するプロセスにおいて、ブレインストーミングで得られた多数のアイデアを縦軸と横軸で整理する「効果と実現性のマトリクス」を作成する。このマトリクスを用いて最優先で具体化・検証すべきアイデアの領域は1である。
答えと解説を見る
正解は 2(効果が高く実現性が容易な領域)です。
【概要】
効果と実現性のマトリクスは、縦軸を効果、横軸を実現性としてブレインストーミングのアイデアを配置する図である。右上にあたる効果が高く実現しやすいアイデアから具体化していく。
【図解】実験的機能
図解は実験的機能です。内容を簡略化しているため、公式テキストの記載と異なることがあります。
【各選択肢の解説】
- 1. 効果は低いが実現性が容易な領域あなたの解答 効果が低く実現しやすい領域は取り組みやすいが得られる効果が小さく、最優先で具体化する対象ではない。
- 2. 効果が高く実現性が容易な領域正解あなたの解答 効果が高く実現が容易な領域は右上に位置し、改善案の作成やPoCで最初に具体化・検証する対象である。
- 3. 効果が高く実現性が困難な領域あなたの解答 効果が高く実現が困難な領域は効果は期待できるが実現性に難があり、最優先の具体化対象ではない。
- 4. 効果も実現性も平均的な領域あなたの解答 効果も実現性も平均的な領域は特に優れた点がなく、最優先で具体化する領域ではない。
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よくある質問
第9章は、どの章とつながっていますか?
第9章から、モバイルシステム科目にあたる範囲(もちこ道場の分け方)が始まります。第2章から第8章の技術は、ここで決めた要件を実現する材料として使われます。決めた要件をどう作るかは第10章、作ったあとの運用は第11章です。
要求と要件は、何が違いますか?
要求は顧客が望むこと、要件はそれを整理し、システムが満たすべき条件として合意した形です。要求を引き出して分析し、要件として定義する、という順に進みます。
機能要求と非機能要求は、どう見分けますか?
機能要求は「システムが何をするか」、非機能要求は「その機能がどの程度の品質で動くか」(性能、可用性、セキュリティなど)です。ソリューション要求は、この2つに分けて考えます。
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出題範囲は、2026年10月27日にMCPC の公式ページで確認しました。用語の説明は、もちこ道場の問題と解説をもとにまとめたものです。