第2章 無線アクセスネットワーク技術の要点
誤り訂正符号・OFDM・MIMO を整理
- 第2章は、端末と基地局の間の電波の区間を、物理の側から掘り下げる章です。電波の伝わり方、変調、誤り訂正符号、OFDM と CDMA、MIMO、無線のプロトコルまで出ます。
- 畳み込み符号・ターボ符号・LDPC 符号や、OFDM と SC-FDMAのような似た用語の違いが、空欄の補充で問われます。
- 用語は「何を解決するための技術か」で6つに分けると、覚えやすくなります。
この章で問われること
第2章「無線アクセスネットワーク技術」は、端末と基地局の間の電波でつながる区間を、物理の側から掘り下げる章です。電波の伝わり方、変調、誤り訂正符号、OFDM と CDMA、MIMO とアンテナ、無線のプロトコルまで出ます。基地局の先のネットワーク(コアネットワーク)は第3章です。
もちこ道場の模擬試験(60問・60分)では、第2章から7問を出していて、全体の約12%にあたります。本番(1科目43問)は形が違いますが、この配分から、ネットワーク科目の43問のうち15問前後と予想しています。なお「ネットワーク科目=第2〜4章」は、もちこ道場の分け方です。
用語は、何を解決するための技術かで、次の6つのまとまりに分けると整理しやすくなります。
6つのまとまりと押さえる用語
1. 電波の伝わり方
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| 伝搬損失 | 自由空間では距離の2乗・周波数の2乗に比例して減る。建物の多い場所では距離の3〜4乗になる |
| マルチパス | 反射した電波が、遅れて何本も届く現象 |
| 遅延スプレッド | 遅れて届く波の時間的な広がり。これが大きいほどシンボル間の干渉が起きやすい |
| 周波数選択性フェージング | 広帯域で、周波数ごとに落ち込み方が違う(狭帯域ではフラットフェージング) |
2. 変調
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| QPSK | 位相で2ビットを送る基本の変調 |
| 16QAM・64QAM | 振幅と位相で1シンボルのビット数を増やす。速いが、信号対雑音比(SNR)がよくないと使えない |
| π/4 シフト QPSK | 位相の動きを45度ずつにずらし、信号が原点を通って振幅が大きく落ちるのを避ける |
| 直交変調器 | I 相と Q 相の搬送波にデジタル信号を乗せる。帯域外への干渉を抑えるため、前にフィルタを置く |
3. 誤り訂正符号
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| 畳み込み符号 | 過去から現在までの一定の範囲(拘束長)を使って符号化し、ビタビ復号で復号する |
| ターボ符号 | 復号器どうしが結果を渡し合い、ループ状に繰り返して精度を上げる。シャノン限界に近い性能 |
| LDPC 符号 | 検査行列の大半が0という疎な符号。5G のデータチャネルで使われる |
| インターリーブ | 送る順番を入れ替え、まとまって起きる誤り(バースト)を、ばらばらの誤りに変える |
4. OFDM と CDMA
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| OFDM | 直交させた多数のサブキャリアに分けて送る。送信側は逆フーリエ変換(IDFT)で作る |
| サイクリックプリフィクス | 遅延波による、シンボル間やサブキャリア間の干渉を防ぐために入れる信号 |
| SC-FDMA | OFDM に近い特性で、ピーク電力対平均電力比(PAPR)を小さくできる。上りで使う |
| CDMA | 拡散符号で利用者を分ける。逆拡散には符号の自己相関が使われ、処理利得が得られる |
5. MIMO とアンテナ
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| MU-MIMO | 1台の基地局が、同じ時間・周波数で複数の端末と同時に通信する |
| 送信ダイバーシティ | 複数のアンテナから信号を送り、受信品質を上げる。受信側からのフィードバックを使う型が閉ループ型 |
| アダプティブアレイアンテナ | 複数素子の位相を制御して、狙う方向に利得を向け、干渉の方向にはヌルを向ける |
6. 無線のプロトコルと周波数
| 用語 | ひとことで |
|---|---|
| AS と NAS | 無線資源の制御やデータ転送の側(AS)と、コアネットワークと端末の間で位置登録・認証などを行う側(NAS) |
| SDAP | 5G NR で追加されたサブレイヤ。QoS フローを無線の経路に対応づける |
| PDCP | ヘッダ圧縮や秘匿などを行うレイヤ2のサブレイヤ |
| RLC | フロー制御や重複の検出などを行うレイヤ2のサブレイヤ |
| ダイナミック周波数共用 | 既存のシステムが使っていない場所・時間に、周波数を使う仕組み(2.3GHz帯などで導入) |
| パイロットシンボル | 決まったパターンを送り、受信側で伝送路の歪みを推定して補正する |
取り違えやすい組み合わせ
| 組み合わせ | 見分け方 |
|---|---|
| 畳み込み符号・ターボ符号・LDPC 符号 | 範囲で符号化(畳み込み)か、繰り返し復号(ターボ)か、疎な検査行列(LDPC)か |
| OFDM と SC-FDMA | 多数のサブキャリアを同時に送る(OFDM)か、ピーク電力を抑える(SC-FDMA)か |
| SU-MIMO と MU-MIMO | 1台の端末と通信するか、複数の端末と同時に通信するか |
| 開ループと閉ループ | 受信側からのフィードバックを使わない型か、使う型か |
| 周波数選択性とフラット | 周波数ごとに落ち込み方が違う(選択性)か、帯域全体が同じように落ちる(フラット)か |
| AS と NAS | 無線側の機能か、コアネットワークとの間の移動管理か |
| PDCP・RLC・SDAP | ヘッダ圧縮・秘匿(PDCP)、フロー制御(RLC)、QoS の対応づけ(SDAP) |
この章の勉強の進め方
- 6つのまとまりの名前を覚え、用語を見たら「どのまとまりの話か」を言えるようにします。
- 上の表の組み合わせを、何も見ずに一言で説明できるか確かめます。
- 問題を解いて、迷った用語をその日のうちに見直します。
勉強の全体の計画は「勉強時間の目安と1か月の計画」にまとめています。
第2章の問題を2問、解いてみる
もちこ道場の第2章の問題です。演習画面と同じ解説(図解・選択肢ごとの解説)を付けています。
問1
移動通信ネットワークのプロトコル構成において、基地局やRNC等のRAN(無線アクセスネットワーク)を介して無線資源の制御やデータ転送を担う機能をAS(Access Stratum)と呼ぶのに対し、コアネットワーク(CN)と端末間で位置登録や認証、呼設定などの移動管理・制御を行う機能を1と呼ぶ。
答えと解説を見る
正解は 2(NAS(Non-Access Stratum))です。
【概要】
移動通信のプロトコルでは、RAN側の機能群をAS、CN側の機能群をNASと総称する。NASは通信回線の設定・管理や、位置登録・認証といった移動管理を受け持つ。
【図解】実験的機能
図解は実験的機能です。内容を簡略化しているため、公式テキストの記載と異なることがあります。
【各選択肢の解説】
- 1. SDAP(Service Data Adaptation Protocol)あなたの解答 SDAPは5G NRで追加されたサブレイヤでQoSフローを無線伝送路に対応付けるものであり、CN側の移動管理機能ではない。
- 2. NAS(Non-Access Stratum)正解あなたの解答 NAS(Non-Access Stratum)はCN側の機能の総称で、W-CDMAでは呼制御を担うCCと移動管理を担うMMから成り、位置登録や認証を行う。
- 3. PDCP(Packet Data Convergence Protocol)あなたの解答 PDCPはヘッダ圧縮などを行うレイヤ2のサブレイヤであり、CN側で移動管理を担う機能の総称ではない。
- 4. RLC(Radio Link Control)あなたの解答 RLCはフロー制御や重複データの検出を行うレイヤ2のサブレイヤであり、位置登録や認証を担う機能ではない。
問2
誤り訂正符号の一種である畳み込み符号において、ある時点の出力符号を決定するために参照する過去から現在までの一定の情報ビット長(範囲)を1と呼び、復号側ではビタビ復号等を用いて最も確からしい符号系列を選択・復号する。
答えと解説を見る
正解は 3(拘束長)です。
【概要】
畳み込み符号は、注目するビットから見た過去の一定区間の情報系列全体を使って符号化する方式であり、その区間の長さを拘束長と呼ぶ。復号ではビタビ復号などで最も確からしい系列を選ぶ。
【図解】実験的機能
図解は実験的機能です。内容を簡略化しているため、公式テキストの記載と異なることがあります。
【各選択肢の解説】
- 1. 処理利得あなたの解答 処理利得は逆拡散によって希望信号と妨害信号の電力比が拡散率分だけ改善される度合いであり、符号化の参照範囲ではない。
- 2. 符号化率あなたの解答 符号化率は符号化前後のビット数の比であり、出力の決定に関わるビットの範囲を表す値ではない。
- 3. 拘束長正解あなたの解答 拘束長は現在の出力の決定に関わる過去と現在のビット数を表し、畳み込み符号の符号化と復号の基準となる。
- 4. ハミング距離あなたの解答 ハミング距離は二つの符号の間で異なるシンボルの数であり、ビタビ復号で使われるが参照範囲の長さではない。
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よくある質問
第2章は、2級の無線の章とどう違いますか?
2級でも無線の仕組みは学びますが、1級では符号化の方式(拘束長・ビタビ復号・ターボ符号・LDPC 符号)、OFDM の生成の仕組み、MIMO の方式、レイヤ2のサブレイヤなど、中身まで立ち入って問われます。2級の知識を土台に、なぜそうなるのかまで説明できるようにします。
第2章は、第3章とどうつながっていますか?
第2章は端末から基地局までの無線の区間、第3章は基地局の先のコアネットワークです。AS と NAS のように、両方にまたがる用語もあるので、続けて読むと理解しやすくなります。
計算は出ますか?
もちこ道場の問題では、電波の減衰が距離や周波数の何乗に比例するか、といった関係を問う形が中心です。複雑な計算より、関係と用語を正しく言えることが大切です。
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出題範囲は、2026年10月27日にMCPC の公式ページで確認しました。用語の説明は、もちこ道場の問題と解説をもとにまとめたものです。